7月29日(金)「シン・ゴジラ」の公開が嬉しいので、どさんこカメラ的に北海道が出てくるゴジラシリーズを見返してみます。
ゴジラと北海道②
ゴジラVSキングギドラ(1991年公開)
因縁のライバル・キングギドラ現る!未来人が仕掛けた罠とは・・!?
ゴジラ、モスラと並ぶ有名怪獣キングギドラ。怪獣映画を見ない人でも名前は聞いたことがあるはず。
キングギドラが登場するのはこの映画が初めてではなく、初登場は1964年「三大怪獣 地球最大の決戦」。その後もゴジラシリーズにちょこちょこ出てくるキングギドラですが、タイトルにも「キングギドラ」がつき、やっとゴジラと一対一で戦うことになったのがこの作品です。
怪獣の名前には別名っていうのがありますね。モスラだったら「守護神獣」とかね。
じゃあキングギドラは何かというと「宇宙怪獣」です。東洋チックな竜のようなデザインなのに宇宙怪獣。地球外生命体だったんだね。
キングギドラは金星にあった文明を3日で破壊した暴れん坊。地球へは隕石として落下してやって来ました。
ただそれは昭和キングギドラの設定で、この作品だとちょっと出自が違うんですね。
未来人の陰謀
この作品のキングギドラはどうやって生まれたかというと、「ドラット」という生物3匹が核反応によって合成されてできるんです。
「ドラット」というのは23世紀の人間が持ち込んだ生物で、姿はこんな。
ちょっと画像がカードあれだけど。
ですので、この作品のキングギドラは宇宙からやってきたのではなく、ドラット達がビキニ諸島の核実験の影響で変異した怪獣なんです。
でも、ここで核実験の影響で怪獣になるのは、ドラットではなく、本当はゴジラのはずでした。
1992年、東京に23世紀の未来人がタイムマシンに乗って登場。「未来の日本はゴジラに壊されてるから、過去に行ってゴジラを消しちゃおうよ。」と都合のいいことを言います。あやしい。
未来人の話では、「1954年にゴジラザウルス(恐竜の生き残り)がビキニ諸島でゴジラに変化する前に、ゴジラザウルスを別の場所に移動させて、将来日本にやってくるゴジラ自体の存在を無かった事にできる。」
そ。この作品はゴジラシリーズ初のタイムトラベルものなんです。
え?でもゴジラは居なくなったけどドラット3匹はいいの?っていうと、これはタイムマシーンを持ってきた未来人の陰謀だったのでした。現代の東京をゴジラから救うと見せかけて、未来人がコントロールできる怪獣・キングギドラを誕生させて東京をめちゃめちゃにしちゃうって寸法だったんだね。
ゴジラ、北海道に襲来。
記憶違いでなければ、ゴジラが北海道に上陸するのはこの作品が初めてです。
(↓前回の記事でゴジラが来た神子島は想像上の島)
キングギドラは襟裳岬上空に出現し、千歳基地所属のFー15戦闘機をあっさり墜落させます。
ゴジラとキングギドラは二匹そろって美幌町に上陸。しかしこのシーンはまだ作品の最初。
こんな大きな怪獣が二匹も暴れたら街はめちゃめちゃになっちゃいますが、さすが北海道。最初の戦いはなーんにもないだだっ広い原野で行われ、特に建物の被害はありません。最初からお金かけるわけにいかないもんね。
劇中では美幌駐屯地もちょっぴり登場します。
☆ゴジラ出現スポット☆美幌
美幌といったら美幌峠。峠の上からは摩周湖を見ることができます。
美空ひばりの名曲「美幌峠」の舞台でもあり、歌碑が峠に立っています。
なぜか曲が聞こえてくる?と思ったら後ろでカセットテープが流れてましたよ。
ここにきたらぜひ食べてほしいのが「熊笹ソフト」。
ご当地ソフトクリームはハズレが多いけど、笹の風味がかなりいい線いってます。
周辺の原野。ゴジラとキングギドラはこんな感じのとこで戦ったんだね
☆スポット情報終わり☆
ゴジラは札幌にもやっと来てくれます。シリーズ開始から37年。長かった・・。
ゴジラは大通りのど真ん中に出現。テレビ塔がやばい!
著作権の関係で画像は載せられませんが、おおむねこんな感じ。
こう見ると大きいねゴジラ。ゴジラの身長は前作まで80mでしたが、この作品では100mになっています。ちなみにテレビ塔の展望台部分は地上からおよそ90m。
絶妙な対比です。
新宿破壊シーンの街のミニチュアはとても作り込んでるんだけど、札幌の街の作りはちょっと予算がない感じです。道幅もやたら広いし。
丸井今井の看板は劇中にも登場(右のMの赤字看板)あ、丸井今井は北海道にある百貨店の名前です。
自衛隊の攻撃もなんのその。ゴジラはやっぱりテレビ塔をなぎ倒してくれます。
このあとほくでん(北海道電力)のビルも破壊。
以前の記事にも書きましたが、札幌は地下街が発達していることで有名なマチ。
ゴジラは地下街を踏み抜いて転んでしまいます。おちゃめ。
この美幌と札幌が出る北海道のシーン、はっきり言ってあってもなくても本編には影響しません。
きっとわざわざ来てくれたんだね。
バブルは崩壊しましたよ。
未来人たちが何でキングギドラを操って東京をめちゃめちゃにしたかというと、未来の日本はとてつもない強大な国になっていて、それを嫉んだ犯行でした。
日本が力を付ける前に、過去に戻って日本にダメージを与えようとしたんですね。
この映画が製作された当時、日本はバブル真っ只中。今では考えられないほどノリにのってバブリーな時代だったのです。いけいけだったんです。
作品の中で、主人公である若いノンフィクションライターが立派な一軒家を所有してるのもうなずけます。
そんな時代の空気を感じ、このままどんどん日本が大きくなってしまうのではないか?という不安を描いたのがこの作品です。
これを象徴するのが作品に出てくる新堂という男です。
彼は日本経済を支配する「帝洋グループ」会長。しかし、一介の民間企業でありながら、実は核魚雷搭載の原子力潜水艦を保有しています。
日本の企業であるにもかかわらず、民間企業であるにもかかわらず、核兵器を所有する権力を彼は持ってしまったのです。まさに暴走です。
新堂は太平洋戦争中、ラゴス島でアメリカ軍に圧倒されそうになったところをゴジラザウルス(後のゴジラ)に助けられた過去がありました。
瀕死になったゴジラザウルスを島に残し、涙ながらに敬礼し島を去る新堂の隊。
時が経ち軍人から経営者になった新堂は、皮肉にもゴジラザウルスに、ゴジラという形で対面します。
あの時の恩を、忘れたのか。とでもいった感じでゴジラは窓越しに新堂を睨み付けます。
かなり長ーい見つめあいの後、何かを悟ったかのようにうなずく新堂。
ゴジラは咆哮したあと、新堂をビルごと放射熱線で爆発させるのでした。
ゴジラは核兵器という人間の愚かな発明の産物。新堂とゴジラのシーンは、裏を返せば、経済成長でどんどん豊かになる日本は過去の悲劇を忘れて行くのではないか。というゴジラの怒りのシーンともいえます。
しかし映画とは裏腹に、現実の日本は超大国になることもなく、映画が公開された1991年にはバブルが崩壊。キングギドラが東京をめちゃくちゃにしなくても、日本の経済はガタガタになったのでした。今の日本で「日本が超大国になって・・」なんてシナリオは恥ずかしくてできませんね・・。
恥ずかしくてといえば、この作品はハリウッド作品の二番煎じのようなキャラクターや似たようなシーンがたくさん出てきます。ターミネーターを見た後でこの作品を見た方がいいかもしれません。たぶん笑えます。それはないべやー!と突っ込みながら優しいまなざしでご覧ください。
そこも見どころといえば見どころ。
ちゃんとした見どころにも触れとくと、やっぱり特撮シーンです。
特にキングギドラは翼が動いて飛ぶわ、首が3つも動くわ、3つの口が光線を吐くわでとても迫力があります。キングギドラの首、しっぽ、翼などにはピアノ線を付けて動かしています。キングギドラが映画に登場するのは前作から19年ぶりですから、特撮スタッフもさぞ大変だったでしょう。
そんな裏方の苦労も想像しながらご覧いただくと楽しいと思います。
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