ハッカ。薄荷。つまりミントのこと。
ハッカもミントも同じものだ。
なぜミントだけではなく「ハッカ」という和名を持っているのかというと、そりゃそれなりに昔から自生している植物だからだ。2000年くらい前に中国から来たとか来ないとかいう話である。
昔から日本に生えているものは「和種ハッカ」とか「日本薄荷」と呼ばれていて、ペパーミントなどの洋物とは区別できるのだ。
ハッカがお金になる作物として本格的に栽培が始まったのは約150年くらい前。
まず山形県で栽培が盛んになった。
北海道にはというと、もともと自生していたらしいが栽培作物としての苗は開拓時代に本州から持ち込まれたらしい。
ハッカを栽培してどうやってお金になるのか?
どうしてたかというと、葉っぱを乾燥させて蒸留し、ハッカ脳(メントール)というスースーする成分を取り出して輸出していたのである。
北海道では北見市で栽培に成功し、一大産地になったのは昭和初期。
当時の北見市にはハッカ畑がどんどん増えていき、
昭和8年にはハッカ精製工場が完成。
昭和13年には、なんと世界の生産量の70%を北海道の北見ハッカが占めた。
むかしからある北見の銘菓「薄荷樹氷」なんていうのは、その名残だろうね。(甘納豆をハッカで包んだお菓子)
ところが・・・
中国産だのブラジル産だの、安価な輸入ハッカの出現によってその地位は揺るぎはじめ、1971年にハッカの輸入が自由化すると北見ハッカは事実上崩壊した。
(これ、ハッカだし昔の話だから他人事かもしれないけど、今の日本はコメや野菜だってやりかねないからコワい。)
さらに人工的にハッカ成分を合成する「合成メントール」の台頭により、北見ハッカは世の中から忘れ去られていったのでした。
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天然のハッカは蒸留して「ハッカ脳」(結晶)と「ハッカ油」に分離する。
このうちハッカ脳とそっくりに有機化合物を合成したのが合成メントール。ハッカ脳との違いはほとんどない。
というわけで、僕らの身の回りの「ミント味」と書かれているもののほとんどは、ハッカから造られた天然のものではなく「合成メントール」だ。
裏付けができなかったが、市場では合成メントール7割、天然メントール(ハッカ脳)3割ででまわっているらしい。もちろんこのうち天然メントールでもインドや中国など外国産がほとんどという事になる。
つまり身の回りの「ミント味」には、天然で、日本産のものはほぼ無いという事だ。
・歯磨き粉
清涼剤として「メントール」の表記。そもそも天然メントールか合成メントールか表記を義務づける法律なんてないので、合成メントールだと思う。
天然メントール使ったら歯磨き粉高くて買えなくなるよね。
・スースーするお菓子。
もはやメントールの文字すらなし。こんなにスースーするのに・・。
たぶん「香料」の中に何かしら入ってると思われる。
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この間、北見に行ったらこんなの売ってた。
スースーするタブレット。なんと、合成メントールではなく和種ハッカのハッカ脳を使用しています。
「ハッカ脳」、「ハッカ油」ってちゃんと書かれてますね。
このちょっとした贅沢にどの程度の人が気付くでしょう・・
味は普通のものよりマイルドな気がした。
お値段はミ〇ティアとかより高いです。
この時、かつての北見のハッカ最盛を伝える「北見ハッカ記念館」にも行ったんだけど、
そこで和種ハッカの苗をもらった。
それを空き地に植えたのは何年前だったか。いつの間にか消えてしまったと思ったら、わさわさ生えてた。
わさわさ。
品種は「まんよう」。昭和20年代に作られた品種だ。
まんようは栽培のために品種改良された病気(ハッカ自身の病気)に強いハッカで、農水省認定品種でもあった。
北見ではハッカの品種改良もかなり進んでいて、他にも、貼り薬用の「さやかぜ(北系J16号)」や、ハッカ油に重点を置いた「ほくと(北海J20号)」など色んな品種があり、調べると面白い。
まんようの旺盛な繁殖力にすこしビビった僕は適度に収穫し、もっと広い場所へ植え替えた。
おされな「ミントウォーター」でもこしらえようと思って、飲みかけのボルヴィックにまんようをつっこみ、良く振って冷蔵庫で寝かせた。
和種ハッカウォーター。
青臭くておいしくなかった。やっぱペパーミントとは何か違うのか。
かつて昔の人がやっていたハッカ脳の精製方法は、
ハッカの乾燥→水蒸気蒸留→取卸油冷却→濾過
という手順で出来るらしい。
こういうのができるのかな?
科学の実験でも定番らしいのでビーカーやフラスコをお持ちの方は試してみてください。