こないだ北海道博物館に行ったのですが、
そこの展示で「アッツ島の戦い」というのを知ったのでまとめてみたいと思います。
「アッツ島」
「アッツ島の戦い」って聞いたことあります?
第二次大戦中の戦闘なんですが、僕は恥ずかしながら、ここに来るまで知りませんでした。アッツ島の戦いには北海道からも多くの人が出兵し、亡くなっています。
1943年の北海道新聞です。
アッツ島に全員玉砕 北方鎮守の鬼神と化す
このアッツ島の戦いで日本軍は玉砕したんですが、初めて日本国民に日本軍の敗北が知らされた戦いでもあります。まあ、そういう意味で見ると上の新聞の意義もまた違ってきますね。
「アッツ島」はこの赤いとこです。(縮尺は適当なのでだいたいの位置。)
北アメリカのアリューシャン列島の島です。
ぱっと見地図を見ても北海道からははるかかなたの島ですね。こんなに遠いところでも戦闘をしていたとは。
1942年、日本軍はアメリカ領土である「アッツ島」と「キスカ島」を占領します。
アメリカの領土を奪ってたなんて意外ですけど。
ところが、結局アメリカ軍の猛攻にあって、ついにアメリカ軍は1943年、島に上陸し、地上戦になります。
島の周囲はアメリカ軍の艦隊が取り囲み、砲弾が撃ち込まれ、多くの日本兵が銃撃に倒れました。ついには、日本の大本営がアッツ島の奪還は無理だという判断を下します。
アッツ島に残された兵士たちは、見捨てられてしまったわけです。
事実上の玉砕命令(潔く国のために死んでこいという事です)が下されました。
兵士たちは、捕虜になることも許されない時代、野戦病院の患者は自決したといいます。
指揮官だった山崎保代部隊長は、負傷した300名の最後の兵を引き連れ敵陣に突撃をかけますが、全滅します。
アメリカ軍の死者約600名に対し、日本軍の死者は2,638名、生き残ったのはわずか28名と言われていますから、いかに悲惨な戦いだったかがわかります。
あとですね、アッツ島の戦いで33歳で戦死した、辰口 信夫という日本軍医という方がいるんですが、なかなか興味深い。
この人は両親共に英語が話せる家庭で育って、アメリカで勉強して医師免許を取得しました。クリスチャンだったそうです。
で、彼はアッツ島の戦いの最中に日記をつけてたんですが、戦死した後アメリカ軍に回収されて英語に翻訳されています。日記はどこかで行方不明になってしまい、いま日本語で読めるものは英語からの再訳らしいです↓。
「夜二〇時本部前に集合あり。野戦病院隊も参加す。最後の突撃を行ふこととなり、入院患者全員は自決せしめらる。僅かに三十三年の命にして、私は将に死せんとす。但し何等の遺憾なし。天皇陛下万歳。
聖旨を承りて、精神の平常なるは我が喜びとすることなり。十八時総ての患者に手榴弾一個宛渡して、注意を与へる。私の愛し、そしてまた最後まで私を愛して呉れた妻耐子よ、さようなら。どうかまた会ふ日まで幸福に暮して下さい。ミサコ様、やっと四才になったばかりだが、すくすくと育って呉れ。ムツコ様、貴女は今年二月生れたばかりで父の顔も知らないで気の毒です。
○○様、お大事に。○○ちゃん、○○ちゃん、○○ちゃん、○○ちゃん、さようなら。
敵砲台占領の為、最後の攻撃に参加する兵力は一千名強なり。敵は明日我総攻撃を予期しあるものの如し。」
これを読んだアメリカ人はどう思ったんでしょう。
アメリカの教育を受け、クリスチャンであった彼が米軍に殺されたという事で、アメリカ本土でも話題になったらしいですが、一番心を打ったのは敵にも味方にも家族や大切な人がいるという、戦争中は一番考えたくない事実がそこにあったからではないでしょうか。
さてアッツ島と一緒に占領した「キスカ島」はどうなったかというと、やっぱりそこにも日本兵が取り残されていました。しかも6,000人。
ところがこちらの方は、全員玉砕・・とはいかずに、霧に紛れて日本へ密かに脱出したのです。興味のある人は調べてほしいのですが、何でこんなにラッキーが重なったんだろうというくらい偶然が重なり、島の周辺にアメリカ軍艦がうじゃうじゃいるにも関わらず撤退に成功しました。
これはのちに東宝映画「太平洋奇跡の作戦キスカ」にもなっています。
キスカ島の場合は、アッツ島と違い戦力に割と余裕があったので脱出させられたんじゃないかなと思います。まあ、人命どうこうというより、鍛えた兵士も立派な武器ですから、6000名分の戦力を失うより回収しようという感じだったのでしょう。
同じ時に占領された2島でこうも運命が違うのは、後の世から見ればドラマチックですが、当事者にとっては悲惨なものです。
さてアッツ島に話を戻しまして、
1943年に札幌の中島公園でアッツ島殉死者の慰霊祭が行われています。
記録によると陸軍中尉以下2,553名の英霊を弔い、一般市民が多く参列したとの事ですから、北海道から出兵した人数は相当数と思われます。