どさんこカメラ

北海道各地で撮った写真を掲載します。

北海道から発掘された「むかわ竜」がすごい

北海道のむかわ町穂別地区で発掘された恐竜がすごい。

発見されたのは2003年。

発掘されたその恐竜は、通称「むかわ竜」と呼ばれている。

ハドロサウルスという草食恐竜の一種とみられる。

 

ブログを読んでいる方の中にはかつての恐竜少年・少女も含まれていると思うが、僕もその一人。

今回の「むかわ竜」の発見は、子供だけでなく大人も充分興奮させてくれるニュースだ。

 

大発見にも関わらず、Wikiにさえまだそのページが無いのが不思議だ(誰か作ってください)

むかわ竜は、北海道のみならず日本の宝といっていいと思う。

今回はそのむかわ竜の魅力について紹介します。

 

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発掘された穂別地区はこのへん

 

 

貴重な「全身骨格化石」

恐竜の化石と聞くと、ジュラシックパークに出てくるような完璧な骨格を想像するかもしれない。

しかし実際の発掘では、頭の先からしっぽまで完璧に保存された化石というのはなかなか出てこないのが現状だ。

特に日本では、全身骨格がそろって綺麗に発掘されることはほぼ無い

日本で発掘された恐竜化石というのは、歯だけとか、骨1本だけとか、ほとんどがバラバラになった部分化石だ。

しかし、今回発掘された「むかわ竜」は、なんと骨の一部がつながった状態で保存されていた(!)うえに、頭からしっぽまでほぼ欠損なく発見された。

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 ▲むかわ竜の復元レプリカ。

多くの化石標本は「想像で補っている部分」が多いが、この写真の骨は実際に発見され組み立てられた骨格。

 

日本の古生物学は1930年代から始まった。しかし、「全身骨格」が発見されたのは今回を含めわずか2例しかないのだ。

 (ニッポノサウルスを含めれば3例目になる。詳細は過去のエントリーを参照)

 

 

あの有名な恐竜の化石は・・・

日本で恐竜といえば、恐竜王国・福井県が有名だ。

200億円をかけて建てた恐竜博物館もあるし、新種の恐竜フクイラプトルやフクイティタンも発見されている。

しかしそんな恐竜王国の恐竜たちでさえ、発見された骨はわずかだ。

 

フクイラプトルはあごの骨や前肢、足の一部しか見つかっていない。

フクイティタンは首と前後脚の一部しか発見されておらず、頭骨はまだない。

▼白い色の部分はまだ見つかっていない

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兵庫県で発見されたタンバリュウも、前身の2割程度しか発見されていないという。

もし見つかった化石だけで標本を組み立てたら、何の恐竜かわからないだろう。

 

もちろんこれらの恐竜の発見は素晴らしいし、日本の恐竜として誇るべきものだ。しかし、いかに全身骨格の事例が少ないという事が分かると思う。

 

そもそも産地がどうこうという話ではなく、全身骨格が残るには「運」が必要だ。

むかわ竜はハドロサウルスという種類の恐竜だが、淡路島の洲本でも同じくハドロサウルスが発見された。非常に状態が良く美しい顎の化石が見つかっている。

ところが発見場所が石の採掘場であったため、残りの化石は既に「建設材料」として建設現場に運ばれてしまい、今は某空港の滑走路になってしまったとかいう話で大変残念だ。

とにかく、これらと比較していただければ「むかわ竜」の骨格の完璧さがいかに奇跡的なものかわかっていただけると思う。

 

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なぜこのように完璧な状態で化石になったかというと、何かの原因で死んだハドロサウルスが海まで流され、そのまま海底に沈んで化石になったからだと推測される。

海に沈んだからといってすべての遺骸が保存されるわけでは無く、多くは海洋生物に食い荒らされバラバラになる。

そういった危険を回避したという点でも、むかわ竜は運が良かった。

海の地層から見つかる全身骨格は世界的にみても稀で、むかわ竜以外には世界で2例しか確認されていない。

 

 

 体のサイズもでかい!「むかわ竜」はこんな恐竜

むかわ竜はサイズもすごい。恐竜全身骨格として国内最大だ。

日本で初めて見つかった全身骨格化石はフクイベナトールという恐竜だが、フクイベナトールは小型の恐竜で体長2.5メートルだった。

むかわ竜は少なくとも8メートルあるから、頭からしっぽまでだいたい中型バスと同じ全長と想像するとわかりやすい。大きい。

むかわ竜は白亜紀後期に生きたハドロサウルス科の草食恐竜だ。まだ学名がついていないので「むかわ竜」という愛称で呼ばれているけど、ちかいうちに学名がつけられるだろう。2019年9月6日”カムイサウルス・ジャポニクス(Kamuysaurus japonicus)”というかっこいい学名がつきました!

 

 

ハドロサウルスはくちばしの様な口を持ち、食料である草の消化能力が高かったので北米大陸からアジアまで幅広く生息していた。

ハドロサウルスは「トサカがあるやつ」「トサカがないやつ」がいるが、むかわ竜にトサカがあったかどうかは不明だ(あったらいいな)

この辺については別の機会で詳しく書きたい。

 

 

 

発掘記「ザ・パーフェクト」はぜひぜひ読んでほしい!!

ザ・パーフェクト―日本初の恐竜全身骨格発掘記: ハドロサウルス発見から進化の謎まで

ザ・パーフェクト―日本初の恐竜全身骨格発掘記: ハドロサウルス発見から進化の謎まで

 

 この「むかわ竜」の発見からは発掘までをまとめたのが「ザ・パーフェクト」という本なんだけど、面白いのでぜひぜひ読んでほしい

むかわ竜関連の本が結構出てきているけど、これが一番面白い。

 

この本を書いている土屋健さんはその界隈では結構有名なサイエンスライターだ。

この本はちょっと書き方が変わっていて、本書でも言及されているが

「化石が発見されてからどんな恐竜かわかるまで」では無く、

「どのような人が化石を見つけたか」

「どのような人が化石を掘ったか」

というに徹底的にクローズアップして執筆を進めている。

ただの発掘記のように平坦でなく、まるで小説かドキュメンタリーのようだ。

あまり恐竜や化石の知識がない方でも面白く読み進めていけると思う。

 

あまり詳しくは書かないが登場人物が面白い。

散歩中に偶然むかわ竜を発見した堀田さん

恐竜には関われないと思っていた学芸員の西村さん

発見された化石を長期間保管?していた櫻井学芸員

クビナガリュウの権威佐藤准教授

そして日本一の恐竜研究専門家、小林教授。

もし堀田さんが散歩していなかったら?もし櫻井さんが化石を大事に保管せず、小林教授の北大赴任と時期がずれていたら?穂別でクビナガリュウが発見されておらず彼女が化石に興味を示さなかったら・・?

 

ザ・パーフェクト―日本初の恐竜全身骨格発掘記: ハドロサウルス発見から進化の謎まで

このうちの誰か一人でも欠ければ、むかわ竜は陽の目を見なかっただろう。

まさにこの時代、この瞬間を選んで「むかわ竜」は僕らの目の前に現れたのだ。