「1杯3,000円のコーヒーがあるんだって」
コーヒーに3,000円はいくらなんでも高すぎる。
缶コーヒーなら90円、良いコーヒーでも1,000円くらいが相場だ。
しかしいつも混雑しているその店には偶然にも空席があり、今すぐ入れば座れそうだ。
まあ座るだけで、その3,000円のコーヒーとやらは別に頼まなくても良い。
僕らはそのお店に入ることにした。
「1杯3,000円のコーヒーは期間限定なんだって」
1杯3,000円というコーヒーに興味をひかれつつもその金額に慄きつつもやっぱり興味津々な我々は、やっぱり飲んでみたくなった。そして何人かで割り勘してこのコーヒーを飲もうという姑息な手段にでたのである。
(一人に一杯ずつお手頃なコーヒーをちゃんと注文しています。数人で一杯はマナー違反だからね)
1杯3,000円の正体、それは
「世界一高級なコーヒー」といわれるアラミドコーヒー
(どれくらい高いかっていうとこんな感じ)

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- 出版社/メーカー: ufu coffee(ウフコーヒー)
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アラミドコーヒーが高級な理由は、生産量が少ないからである。
どうやって作っているかというと、ジャコウネコのフンから作っているのだ。
ジャコウネコというのはタヌキのようなイタチのような顔をした動物だ。
東南アジアなどの森林に住んでいる。
ジャコウネコは雑食なので昆虫やらフルーツやら何でも食べる。そしてコーヒーの実(コーヒーチェリー)も好物でよく食べるらしい。
ジャコウネコが食べたコーヒーの実は、消化されずにフンとして出てくる。
それを洗浄・焙煎したのがアラミドコーヒ―なのだ・・・。
ちなみに同じジャコウネコのコーヒー「コピ・ルアク」もあるが、こちらは飼育しているジャコウネコにコーヒーを食べさせて作っているそうで、フォアグラ的なかわいそうな感じだ。アラミドコーヒ―はというと、野生のジャコウネコのフンを森で拾い集めて作ってるんだそうだ。といってもそういうのは言ったもん勝ちでどこまで本当かはわからないのだが。
しばらくすると店員さんがうやうやしくアラミドコーヒーを持ってきた。
めっちゃ小さいカップだ。これで3,000円・・・。
▲当たり前だけど見た目は普通のコーヒー。
店員さんがやたらと砂糖とミルクを勧めてくる。
しつれいな、ぼくらはまがりなりにもこーひーつうですよ。というような顔をしてお断りした。
さてまず薫りから・・・
「むむ・・・!」
お味は・・・・
かつてホームセンターでバイトをしていた僕は、この味に既視感がわいた。僕はこの味を知っている。
「肥料・・・・・・」
別の友人
「土・・・・・・・」
そしてかすかに、しかし確実に、遠くの方であれのような香りがするのだ。
しかしながら、そういったものと美味しいもの、良い香りのものというのは実は紙一重なのである。チーズなんかは良い例で、おいしいと思う人にとっては発酵食品だが苦手な人には腐敗臭だ。
もう一つ例を挙げるなら、スカトールという哺乳類のフンからとれる化合物は、高濃度ではそのままあれのにおいだが、薄めると花のような香りになる。実際、香水や芳香剤にはにはスカトールが使用されている。そしてフンだけでなく、花の香気にもこの成分が含まれているのだ。自然は不思議だ。
それからコーヒーは淹れる人の技量というのも大きいので雑味をのこしたのかうまみをのこしたのか僕らにはわかりかねる。いずれにせよ好みの問題だ。人間は我儘だ。
「一生に一度でいいから飲んでみたい」
と言ってはしゃいでいた我々の意見は、
「一生に一度でいいね」
という意見で落ち着いたのであった。
アラミドコーヒ―は冷めていくごとに渋さ苦さ、独特のどっしりとした香りが増していくのだった。
僕は外のエスカレーターを眺めるなどして飲む順番をやりすごした。
快晴であった。
砂糖とミルクが欲しいと思った。