小樽といったら、運河にガラス、オルゴールにレトロな建物。
かつては札幌をしのぐ勢いで人口が急増し、優れた文化や芸術が花開きました。
20以上の銀行が立ち並ぶ様子は「北のウォール街」とも呼ばれ、経済発展の中心地でもありました。
そんな大正、昭和期の「ノスタルジー」を残す場所。
それが小樽だったと思います。
だんだんそれが無くなってきたのが、実感として2000年代くらい。
まあ時代の流れなので、いいとも悪いとも思いませんが。
ただ、外国人観光客の求めているものは「20年前にすでに日本では終わった観光地としての魅力」なので、観光地としてもあまり有益ではないんですよね。
それを求められるがままに造っていくと、不思議なことにどこにでも同じような店が造られて、同じような場所しかなくなって画一的な風景が広がって、どの町も同じになっちゃうわけですね。
画一的で均一な価値観が広がっちゃうと、興味の無かったところに興味を見つけるという発見もなくなってしまうので、結果としてつまんない人間が増えて、そのつまんない人間はつまんないことしか考えないんでつまんない場所がまた増えていくんです。
各地で行われているインスタ映えとか出来の悪い二次元キャラがいい例ですけど。
そして観光地としての魅力が無くなる。
・・・そんな悲しい妄想はさておき、「小樽文学館」へ入ってみました。
小樽駅から歩いて10分くらいですよー
昔の資料館!って雰囲気がいいでしょ。
ここには小樽ゆかりの文学にまつわる展示があります。
小林多喜二、伊藤整なんかは有名どころですな。
こちらは鉄板、小林多喜二コーナー。
政治背景はさておき、多喜治の母親の手紙なんかを見ると胸にこみ上げるものがあります。
こちらは伊藤整の書斎を再現したもの。
ごちゃっとした感じがいかにも作家の部屋って感じでかっこいいです。
通称「井戸の底の様な」仕事場。
伊藤整は小説家とか翻訳家、詩人といろんな顔を持っていました。少年時代を小樽で過ごし、その後小樽で英語教師をする傍ら投稿していたそうです。
有名どころでは「チャタレイ夫人の恋人」の翻訳。これは表現の自由をめぐったチャタレー裁判なんかも引き起こしちゃって・・その仕事もここで行ったそうです。
あと、短歌では並木凡平なんかもいいですよね。
僕は日本の小説の陰鬱とする感じがちょっと苦手で、小説界隈はそんなに詳しくないのですが、短歌や川柳は好きなのでそのあたりの展示は楽しかったです。
ちなみに個人的に好きな田中五呂八の川柳もたくさんありました。
ちょっと紹介
‟人間を 掴めば 風が 手にのこり”
これは歌碑もある有名なやつですね
‟日曜の続く明るい国ありや”
なんて風刺のきいたやつとか
‟「いろは」だけ知ってほとけでゐるがいい ”
なんてのを聴くとぞっとしちゃいますね・・
並木も田中も蔵書が少ないので(というか古書が高いので・・)、このへんの資料は眼福。
展示の中には何篇か川柳がありますので興味のある方はぜひ
館内にはちいさいカフェや読書コーナーなんかもあります。
思った以上に年季の入った建物で、なんというか昔の図書館みたいな雰囲気でおちつきます。
喧騒を避けたい人にはおすすめ。
小樽文学を読んで、頭の中に自分だけの小樽。というのもなかなかいいですね。
それは壊されることがないですから。