どさんこカメラ

北海道各地で撮った写真を掲載します。

阿寒の自然はその一歩のおかげ、「前田一歩財団」の話


FXやビットコインが手軽になったこともあり、「億り人」も夢じゃない時代であります。

巨額のお金があったら皆さんは何が欲しいですか。

僕は、森が欲しいです・・

 

 

北海道は日本の森

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北海道の自然がどれくらい豊かかというと、森林面積は554万㏊と日本で一番広く、さらに北海道の中身を見てみると、その約70%が森林です。

北海道の政令都市である札幌市ですら住宅街にヒグマが出たりします。

530万の人口と共に多くの野生動物が共存すること、これは世界的に見ても珍しいそうです。

 

道民にとって山があること、森があることはもはや当たり前であります。

 

しかしながら、自然は守らなければ消えてしまうんだな〜、というのがかつての日本の高度経済成長期の反省点であります。

 

 

自然は守るものっぽい

経済が発展すると自然の風景がやばくなるじゃん、といち早く気づいたのはイギリスであります。

イギリスでは19世紀に人類の大発展「産業革命」が起こりますが、それは同時に人類の自然破壊と環境汚染のはじまりでした。

なんか自然壊したらやばいかもしんない・・・みたいな感覚が人類に初めて芽生えるわけですね。

そんなイギリスで3人の民間人が創設したのが「ナショナル・トラスト」であります。

自然の豊かな土地を寄付や買い取りなどで入手し守る団体です。

実際に土地を確保して守るというのがポイント。

 

「ピーターラビット」の作者であるビアトリクスポターが湖水地方の1,700haを超える土地を買い取り、ナショナル・トラストに寄付したのは有名な話ですねー

 

日本も明治時代になると、一般人でも海外留学をするようになります。

そこで「海外では人間が自然を保護するのがトレンドっぽい」というのを知るわけですね。

 

 

一歩の始まり

鹿児島藩の藩医の子として産まれた前田正名という人は、明治2年にフランスへ留学し、8年ほど留学をしていました。

その後明治政府で働くのですが、そのかたわら、各地で農場を経営や産業振興に取り組みます。

なんと下着メーカーの「グンゼ」や「釧路銀行」の創業にも一役かっております。

 

彼はこんな言葉を残しております。

「わが為には苦労はせぬが 恋し日本に苦労する たった一つの糸柱 それに並んで茶の柱 あぶない日本のその家に 四千万のこの民が 住まいするのを知らないか」

糸柱と茶柱っていうのは、当時の日本の主要輸出品である「生糸」と「茶」のこと。

生糸と茶を強くしないと、日本はグラグラになっちゃうぞ!国民の命かかってるんだぞわかってんのかこのやろー!みたいな、とにかく工業に関してはめちゃアツイ人、というのがこの句から伝わってきます。

 

彼は明治39年に阿寒の国有未開地の払い下げを受けて「阿寒前田一歩園」という牧場を拓きました。

前田正名っていう名前なのに、なんで「前田一歩園」って名称なのかというと、「物ごと万事に一歩が大切」という座右の銘から「一歩」を名付けたらしいです。

 

 

 

で、前田一歩園は最初は農場経営とか製紙業のために買われた土地だったんですけど、だんだんと彼は阿寒湖一帯の美しさに魅せられていったわけですね。

「この山は切る山ではなく、観る山にすべきである」

という彼の言葉が通り、この地一帯の自然を保護して広く共有しよう!という風になって行きました。

もともと海外留学をして環境保護という概念を得ていたというのはありますが、産業だけではなく自然保護も大事だという事を、産業に深く関わるがゆえに感じていたのかもしれません。

 

ちなみに今の「阿寒摩周国立公園」は前田一歩園として彼が購入した土地が元になっています。

彼の自然保護活動に明治天皇も感銘し、皇室の財産である「御料林」を彼に払い下げました。

北海道のみならず、九州にある「阿蘇くじゅう国立公園」も彼の土地が元になってます。

いったいどれほどの土地を持っていたのか、もう規模がデカすぎてよくわかりません‥

 

 

 

タカラジェンヌからアイヌの母へ

前田正名は1921年死去

息子の正次が前田一歩園の2代目園主になりますが、病気で早くに亡くなります。

そして3代目園主となったのが、2代目園主の妻前田光子です。

 

光子は1927年、宝塚歌劇団17期生として寶塚少女歌劇團に入団。つまりタカラジェンヌです。

宝塚歌劇団を退団後、正次と結婚し阿寒に移住します。

夫の死後、急に園主を引き受ける形になるものの、義父と亡夫の意志を引き継いで植林などで土地の保全に務めます。

その一方で、彼女は地元に住む阿寒アイヌ達の居住地確保のため、無償で土地を貸します。生活を助けるため、木彫りの工芸品の作業所を建てたりもしました。

この活動の結果生まれたのが観光地として有名な「阿寒アイヌコタン」です

▼現在の阿寒アイヌコタンf:id:tamayoshi:20170507140613j:plain

いつしか彼女はアイヌの人々から「ハポ」(お母さん)と呼ばれ、慕われるようになります。

 

また彼女は、前田一歩園の自然を永遠に守るため、私財をなげうって財団法人化に尽力します。

1983年「前田一歩園財団」として財団の設立に成功しましたが、その14日後に亡くなりました。

 

 

 

 自然は金と良心でしか守られない

前田正名が強欲な実業家のおっさんだったら、光子が金だけあればいい嫁だったら・・・・どちらにしても阿寒湖の美しい自然は今お目にかかれないでしょう。

 

昔のお金持ちにとって、「自然保護」と「芸術振興」って一種のステータスだったんですけど、それだけじゃなくて「資産を公共の利益に供する」っていう良心が強かったと思うんですよね。

現代は個の時代っていわれてますけど、お金持ちのお金の使い方も個に向かってるんじゃないかな、と、宇宙に行こうとしてる富豪をみると思います。

 

 

話はそれますが、北海道の土地が外国にたくさん買われておりまして、全道で3,085haの森林が外国のものになっています。用途については不明とか資産所有とかいろいろです。昨年度調査より増加してます。

今はコロナ禍で落ち着いてますけど、いずれこういう土地にホテルとかバンバン建つんでしょうな・・・

陰謀論は信じませんが、なんとなく嫌だなって感覚はあります。

 

あと外国人のみならず、国で保護しているはずの国立公園といえども油断はできません。

1972年の札幌オリンピックではアルペンスキーのメイン会場で標高差が確保できなかったため、国立公園内である恵庭岳の森林29haを伐採しまくってコースが開設されてしまいました。

一応、オリンピック終了後に原状復元を行う約束をしてましたが、50年近く経った今も土留めやトンネルなどが残っているそうです。オリンピックの力はいつの時代も恐るべし・・

 

何が言いたいかというと、前田一歩園にしろ外国人の土地買収にしろ、自然は結局金でしか守れないってことです。

 

これから日本が貧しくなる中で、日本の自然を、北海道の自然を守るには結局お金で土地を買って確保するしかないんですよね。

お菓子のパッケージを紙にしたりレジ袋を有料化したりっていうのは、環境に対する意識を高めたり企業イメージアップのためにやってるだけなんで、具体的な効果は全くないんですよ。そんなことやってる場合じゃなくて金だ!金で土地を買え!金が全てなんだ!と僕は言いたい。

だから僕はお金があったら森が欲しい。

 

 

 

さて、大金持ちになる予定はないので、現実的な募金のリンクでも貼りましょうかね。

興味のある方はご覧くだされ。

前述したナショナルトラスト関係のが多いです

 

寄付する/公益社団法人 日本ナショナル・トラスト協会

 

しれとこ100平方メートル運動(北海道斜里町)

 

霧多布湿原ナショナルトラスト Kiritappu Wetland National Trust

 

公益財団法人 知床財団