札幌からほど近い江別市にある「旧町村農場」に行ってまいりました。
農場と言っても牛や畑があるわけでは無く、昭和初期に町村さんちの大きな農場があったというだけで、今はほぼ公園のような感じになっております。
町村家とは
ここで町村家の説明に入ります。
というのも町村家がわかっていないとただの公園に来た回になってしまうから・・・
町村農場というのは今でも「まちむら農場」として活躍している企業でして、乳製品やお菓子の販売にも力を入れております。道民の方はこういう商品↓をみたことがあるんじゃないでしょうか。
北海道はいまでこそ酪農王国になっているわけですが、北海道に乳牛なんていなかった時代は、その飼い方やら搾乳のイロハは日本人にはさっぱりわからなかったわけです。
そこで酪農の本場であるアメリカに渡り、日本にはまだなかった知識を取り入れつつ北海道で大規模な農場を経営したのが町村さんというお方であります。
「北海道の酪農に偉大な功績をのこした人が町村さんなのか~」という理解で充分であります。
町村家のご子息はいまでは政界・学界・実業界にて北海道内外でご活躍されている北海道の名門でございますんで、町村さん関係者から「うちの話か?」と勘違いされるといけません。なので今回は町村敬貴(ひろたか)さんの話をしましょう。
こう言うとまたまた町村さん関係者から「町村金弥の話はせんのか」という声が聞こえてくると怖いので、ざっと説明しますと、町村敬貴のお父さんが町村金弥です。
父・金弥さんは福井県の武士の家系でしたが、明治10年札幌農学校に進学。卒業後、自ら北海道で土地を取得し牧場経営に乗り出したお方で、5男5女をもうけました。
そんでそのご長男が町村敬貴さんで、今回訪れた旧町村農場を作った人であります。
ほんとはもっとたくさんの人が関わっているんですが説明が長くなるんで、
「ここは町村敬貴って人が作った昔の農場があったのね~」と思ってください。
この人が町村敬貴さんです
アップでどうぞ
牛舎見学
さてこの旧町村農場には歴史的遺構として、当時の牛舎などが残されております。
行ってみましょう。
このキュートなピンクの建物が当時の牛舎です。
牛を繋ぐところ。
悲しいくらいに見学者がいません。
静まり帰った牛舎内に流れる謎のカントリーミュージック・・・
なんだかドナドナされた気分になってきましたが、ドナドナはきっと乳牛ではなく肉牛だったでしょう。
模型の乳牛がちょっと寂しそうなのは人がいないからでしょうか。たくさん牛房があるのに一体しか模型がいないからなのでしょうか・・
昔はここに牛がたくさんいたのだな・・・(深刻な顔)
何だか寂しい気持ちになってしまいましたが、このブログを読んでくださっているみなさんは、この牛舎の形状を見てピンと来たでしょう?
どこかでみたな・・・と。
はいご名答!
札幌農学校第2農場に似ていますね!
以前紹介しましたね。
ピンクの牛舎は「キング式換気システム」を採用していて、現存するものは本家アメリカでも少ないそうです。北海道ではここ、旧町村農場と札幌農学校第2農場でしか見たことがないのですが、他にもあるんでしょうかね~
キング式換気システムは空気の温度差を利用した方法で、汚い空気(暖かい空気)は上に登り煙突から排出され、きれいな空気(冷たい空気)は1階の吸気口から入ってくるという仕組み。
空気の温度差を利用した寒冷地ならではの考え方で、ウィスコンシン大学のキング博士が1889年に発表しました。ピンクの牛舎が建てられたのは1929年なので当時としては最先端の技術だったのではないでしょうか。
ただ実際に運用してみるとうまくいかないこともあったらしく、旧町村農場ではどうだったかわかりませんが、札幌農学校第2農場では煙突が追加で設置されたようです。
写真は札幌の耕馬舎。当初の設計図にはこんなにたくさん煙突は無かったそうで、後から追加して増えちゃったんですね。
(この建物は町村農場じゃないですよ)
結局キング式はあまり北海道には根付かなかったようで、他の換気システムにとって代わりますが、逆に希少な建物になってしまったわけですね。
あとは当時の農機具なんかが展示されています。
牛舎は2階建ですが見学は1階のみ。
天井がガラス張りになっているので、下から様子が見えますよ。
旧町村邸
町村さんち的だった建物が資料館になっております。
見学無料。
玄関先にはアイスクリームもございます。
「農場っていうからアイスクリームを食べに来たのに!!俺は歴史なんか興味ない!」という人の留飲も、こちらの小さな冷凍庫で下がるというものです。素晴らしい配慮。
狭い部屋に文字がびっちり系の資料館なんで、初めて来た人が全部読むのはきついかなという印象。かいつまんで理解したい方は解説員の方が説明してくれるんでご利用くだされ。
町村敬貴さんの旅行カバン
吉田茂首相からのお手紙
見学者も少なくてなんだかさみしげ~と思っていたのですが、この資料館がそんな僕の胸をさらに締め付けました。
当時この農場で働いていた人たちの写真があるのですが、それがまあなんとも素敵な笑顔なのですよ。なんでそんなに笑顔で働いてんの?
町村家の業績とか歴史的資料よりも、笑顔で働く当時の労働者の写真に僕はなぜかショックを受けてしまいました。
今はここに農場があったとは考えられないくらいフツーの住宅街が広がっているのです。月日は百代の過客にして、行き交う年もまた旅人なりってなもので、ここにいた牛も労働者もとっくに彼岸の物となり、農場は住宅地へと変わっていきます。
しかしながら人間が労働し生活するという様式は当時から現在まで変わらず。
行きつく先が結局同じならば、楽しく働かなくちゃいかんですよね。と思いつつ農場を後にしたのでした。
旧町村農場
住所:江別市いずみ野25
開館時期:4月29日~11月23日(冬期休館)
開館時間:10:00~17:00