「ふるさとの訛(なまり)なつかし 停車場の人ごみの中に そを聞きにゆく」
はい、石川啄木の短歌ですね。
「駅の人込みの中から、自分の故郷のなまりが聞こえてきたんで、懐かしくなって思わず聞きにいっちゃったよ」みたいな感じですかね。
あと同じテーマで
「ふるさとの 訛(なま)りなくせし友といて モカ珈琲はかくまで苦し」
これは寺山修司作。
「お前も地方出身なのに、東京に出てきたらなまりもなくしちゃってさ。すっかり都会に染まっちゃって、それって正しいんすかね?そういう俺もコーヒーなんて都会のもの飲んでるけどさ・・」
みたいな感じですかね。
このようにして、なまりや方言というのは一種のアイデンティティーじゃないの?
と昔の知識人は気づいていたのですが、その一方で明治以降、国は近代化のために「標準語」の普及に力を入れたわけですね。学校では方言禁止なんてことも昔はあったみたいです。
その影響は教育現場や一般のご家庭にもおよび、昭和から平成にかけて、なんか理由はわかんないけど方言はだめだ!みたいな謎の風潮が出たわけですね。
僕も子どもの頃は「なまら」とか使うと、はしたないからやめなさいと言われておりました。
一時は立場が危うくなった方言ですが、近年ではドラマや漫画の影響により「方言かわいい」や、震災の復興の合言葉として「力強くていいし言葉の力が伝わる」ということから、徐々にその立場を復活させております。
というわけで、皆さん方言をどんどん使って行きましょう
今回は北海道の方言のあれこれを思いつくまま書いてみます。
北海道民が方言と知らずに使ってる方言
・青たん
体をぶつけた時にできる内出血、共通語の「青アザ」のことですね。
「青たんできた!」みたいにつかいます。
東京や大阪でも使うんですが、もともと北海道でできた言葉が伝わりました。
青たん発祥の地北海道。
・ぼっこ
「棒」のことです。
手にもって振り回せるくらいの長さの棒を「ぼっこ」とよびます。
逆にこれ以外の呼び方あるの?ってくらいメジャーな方言です。
「棒」って単語だとなんか言いずらいですよね?「ぼう」って・・語尾「ぅ」って・・
・ザンギ
もともと、から揚げ全般を指すのが「ザンギ」でした。
いまでは「ザンギ」という独立した料理名として使われています。
普通のから揚げとの違いは、衣にニンニク・ショウガが入り濃い目の味という点。
・なげる
「捨てる」の意味。東北でも使います。
「ゴミをなげる」=「ゴミを捨てる」
・角食
「かくしょく」と読みます。「食パン」のことです。
スーパーの値札や、北海道で売られている食パンの製品名として一般的です。
もともとは北海道のパン業界用語で、食パンの頭が丸いのは「山型食パン」
四角いのを「角型食パン」とよんだのがはじまりです。
・りんごが「ぼける」
日数がたったりんごの水分がなくなり、シャキシャキしなくなった様子。
長野や青森でも使うそうです。
僕はぼけたりんごのほうが好きです。
・うるかす
「水につけておく」の意味。東北でも使います。
「使ったお皿は水にうるかしといてねー」といった使い方をします。
・「~ささる」
自分が意図せず起こしてしまった事象を表現する便利なことばです
「ボタンが押ささった」→自分は押そうとしてないけど、体があたってボタンが結果的に押された
知っておくと便利な、よく聞く方言
・わや
めちゃくちゃな様子
家に帰って犬がトイレットペーパーを部屋中に散乱させていたら「わや」です。
・サビオ
ばんそうこうの事。
もともと「サビオ」とは、スウェーデンのメーカーのばんそうこうの商品名です。
サビオは1963年に日本でも発売されたのですが、国内では北海道でのシェアが1位でした。
商品名がそのまま方言になってしまった珍しい例です。
サビオは2002年に製造が中止されていますが、「サビオ」という言葉だけは残っています。
なお、2020年に熊本県の阿蘇製薬が北海道限定でサビオを復活させています。
絆創膏 サビオ復活!2020年4月新発売!|阿蘇製薬株式会社
・あずましくない
共通語でいう「居心地が悪い」「落ち着かない」みたいな感じ。
ストーブが壊れて修理業者さんとしばらく部屋で一緒だと、あずましくないです。
・こわい
「だるい」「疲れた」という意味。
体がこわいー‥
・ゆるくない
ゆるくはない、つまり「大変だ」「きつい」という意味。
人生はゆるくないなあ。
・おだつ
はしゃいだり、さわぐ様子。あまりいい意味では使われない。
「おだつな!!」と言われた場合「調子乗んな!!」の意味なので静かにしていましょう。
・いずい
体に感じる不快な違和感のこと。
東北でも使いますが、東北では人に対しても使用する(あの人とは気が合わないから一緒にいると居心地悪い)のに対し、北海道では主に自分の感覚に対し使用します。
「歯がいずい」とか「足がいずい」など。
痛いとかではなく、なんだかいつもと違った小さな不快感があるなあ、というニュアンス。
有名だけど実際にはあんまりつかわない方言
・なまら
・めんこい
・~っしょ
めちゃめちゃ有名なこれら3つの方言、正直日常であまり使いません。
でも個人的主観になるんでご承知おきくださいませ。
「なまら」は有名だし意味は分かるけど会社や学校など公共の話し言葉では聞きません。同郷の友人と話すたまにと出ます。
「めんこい」も意味は分かりますが、話し言葉で出ることはありません。50代以上だとたまにつかうかも。
ただ若い人でもSNSで「なまら」「めんこい」はよく使っており、日常生活では話さないけどネットでよく使う。という現象が見られます(誰か研究してください)
ネット言葉も日常会話では使わないんで(使う人もいますが)、同じような感覚で、共通語では表現できないニュアンスを伝えるアイコンになっているのではないでしょうか。「なまら」「めんこい」は今後も生き続ける方言でしょう。
「なまら」「めんこい」に限りませんが、日常生活で使わないのは、自分より年下に対して使う場合「これ若い子に伝わるかな?」という不安から使わないのであり、自分より年上に対して使う場合「失礼だな」という理由で使いません。
なので不特定対数に対するつぶやきであるネット上の発言では、逆に方言は使いやすいのだと思います。
「~っしょ」は北海道民が話す言葉としてドラマや映画で頻出しますが、あんなしゃべり方しません。
細かくいうなら「〜でしょう?」の延長上で「〜しょ?」という用法はあります。
逆に「~べさ」は公共の場所以外で、親しい友人や親せきと話す場合登場します。
「べさ」より「べや」の方が口語として多い気がします(性別による?)
「いいべや別に!」とか言われると、まあいっかなって気持ちになります。
「やべーべや!」とか言われると、マジでやばいなって気持ちになります。
語感がかわいい
日常では使わない場合が多いけどかわいいので残ってほしい言葉
・じょっぴんかる
「鍵をかける」の意味。
僕の曾祖母は使ってましたが、言葉としてはもはや絶滅危惧種
・ぺったらこい
たいらであること
・ばくりっこ
交換すること
・しゃっこい
冷たい
・ちょす
触る
今回のブログは大変ありきたりなテーマでしたが、自分の生活と照らし合わせると使用頻度がわかりますね。皆さんもどれくらい方言が日常会話に残っているのか、耳をすませてみてくだされ。
したらまたねー