どさんこカメラ

北海道各地で撮った写真を掲載します。

「まりも」って結局何なのか。

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これはうちのマリモ。

友達が冗談で阿寒のお土産に買ってきたものを真面目に飼っております。

 

子どもの頃、マリモはケセランパサラン的な謎の生物に違いないと思っていました。

1玉1玉が意思思考を持つ生き物で、だから病気になったり死んだりするのだろうと・・

 

が、マリモの正体は藻です。

藻のカタマリがマリモであります。

1玉がマリモではなく、球を形成している糸状の藻がマリモです。

つまり、たくさんのマリモが集合して1玉ができているわけです。

今日はマリモについてひたすら書いてみます。

 

 

丸くないマリモもいる

糸状の藻が丸まったのがマリモ。と書くと何だかマリモのありがたみが無くなりますが、丸くなるからこそ珍しいのです。

マリモ生息地である北海道阿寒湖のマリモは特別天然記念物に指定されています。

なぜそんなに大事にされるかというと、直径が30センチ近くまで巨大化するものはそうそう無いからです。世界的に見ても阿寒湖でしか確認されていません。

しかもすべてのマリモが球状になるわけでは無く、岩にくっついて生きるやつとか、湖の底を単体で漂って生きてるやつとかもいます。

そうやってふわふわ生きてるマリモが水流や風の影響を受けて、だんだんくっついて丸くなるんだそうです。

ここの写真がわかりやすいので貼っときます↓

www.gakujoken.or.jp

阿寒湖では、沖から来る風が湖面に波を起こし、マリモを同じ位置で回転させるので、全体がまんべんなく丸くなるんだそうです。

 

環境汚染に弱いので、水質が悪くなると死滅します。

そういう環境的な意味も含めて、阿寒湖のマリモは特別天然記念物なわけです。

 

 

日本以外にもいる

僕も北海道にしかいないものと思ったのですが、アイスランドやエストニアの湖にもいるんだそうです。ところがアイスランドの方では工場排水による水質汚染で2010年代にマリモが激減、2014年「絶滅宣言」をしています。

日本にも滋賀県の琵琶湖、山梨県、青森県の湖等で生息が確認されていますが、阿寒湖のように球状にはなりません。

つまり、「丸い大きなマリモ」はもう北海道の阿寒湖にしかいないのでした。

 

 

 

うちのマリモは・・・

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うちで飼っているマリモには目があります。うそです。

黒い点2つはたぶん腐ってきているかなんかしてるんだと思います。(恐いのでいつも目を下にして育てている)

このようないわゆる「お土産マリモ」はどのようにして作られるのか?

知っている方も多いと思いますが、湖で採った藻を、おばちゃんが手で丸めて作っているそうです・・。

マリモは特別天然記念物ですから、勝手に湖からとると捕まります。犯罪です。

そんな中、お土産マリモが出回るわけですから、まあ予想通りというか。このマリモも多分おばちゃんが手で丸めたやつです。

しかしこのように腐った部分があるという事は、このマリモが植物で出来ている証拠でもあります。これは週1回水を変えてあげないといけないんだけど、蓋が開かないように密閉された容器に入ったマリモは、植物ですらなくスポンジとかプラスチックだったりするかもよ・・。

 

 

マリモとアイヌのエトセトラ

1897年、札幌農学校の植物学者が阿寒湖で球状の緑藻類を発見し、翌年、「マリモ(毬藻)」という和名を発表しました。

そのずっと前から北海道に住み、マリモを知っていたのはアイヌですが、意外にもマリモに関する伝承は少ないのでした。

神話や伝承を読んでいても、マリモの記述に出会ったことはありません。マリモのことをあまり意識してなかったんですかね。

マリモの呼び方としては「ト・カリプ」(to-karip沼の球)とか「ト・ラサㇺペ(toーrasampe 湖の化物)と呼んでいたようです。

動物や自然現象を神としていたアイヌですが、単語の意味から見ても特にマリモを特別視していたわけではないようです。

 

アイヌの伝説でマリモが出てくるレアな?ぺカンペの話を紹介します。

※「ぺカンぺ」とはアイヌ語で「ヒシの実」。ヒシの実は池や沼に自生する水生植物。アイヌはヒシの実を加工して主食として食べていて、収穫時期には「ぺカンペ祭り」も昔は行われていました。それくらい食物として身近な植物。

 

『むかし、阿寒湖にペカンペがたくさん生えていました。

ところが、トーコロカムイ(湖の神)は、「ペカンペが水面に群生すると湖が汚れて見苦しい」とペカンペを嫌い、虐待していました。
ペカンペ達は、「仲間を増やしてアイヌたちの役に立ちたいので、どうかここに住まわせてください」と懇願しましたが、トーコロカムイは聞く耳を持たず、ペカンペ達を追いだしました。

ぺカンペは大変怒って、水辺の草をひきちぎって、それを丸めてトーコロカムイに投げつけると、別の湖に引っ越していきました。その丸めた草が、マリモとなったのです。』

 

というわけで、やけくその結果できたもの。みたいな感じで、特にマリモに対して神性は感じていなかったのかもしれません。

 

他に「マリモの恋伝説」っていう、阿寒湖に身投げしたアイヌがマリモになるっていうマリモ版ロミオとジュリエットみたいな話もあります。これは一昔前まで北海道の観光地で頻繁に使われていた話なんですが、実は大正時代に出版された創作話。

しかもアイヌではなく大阪の出版社社長が作ったお話です。一応、アイヌに聞いた話をもとにしたんだそうですが。

最近その証拠のメモも見つかって、この社長さんの造ったお話だと立証されました。

「アイヌの伝説」として観光地で使われていたんだけどね・・。

 

カンの良い方なら、アイヌにとってマリモは神性が無いなら、阿寒でやってる「まりも祭り」って何?と思われたでしょう。

まりも祭りとは阿寒湖で「まりもを迎える儀式」やら、温泉街を「まりも音頭」に合わせて練り歩くというお祭りであります。

実はこのお祭り新しいお祭りで、始まったのは昭和25年です。

アイヌ伝統のお祭りではありません。

マリモが国の天然記念物に指定されたのは大正時代ですが、そのころから阿寒湖ではよくマリモが盗まれていたそうです。(東京とかでも売られてた)そのあともダムだとか伐採だとかの影響で、マリモの数が減っていたらしい。

で、マリモ保護運動が始まったわけですが、まずは「買ったマリモを湖に返してください」ということから始まったそうです。買ったマリモっていうのはもちろん阿寒湖から盗まれたマリモです。ちょっと笑っちゃいますね。これは10年間ほど続けたそうです。

ただ返すのもあれだから、湖に帰ってくるマリモへの感謝として、お祭りをして観光にも役立てようと始まったのが「まりも祭り」なんだそうです。

だからこの祭りを「アイヌの伝統」って紹介すると疑問符が付くわけで、そもそもマリモをカムイ(神)として見ていなかったのにカムイノミ(神に祈る儀式)を行うのは実は不自然だったり。いろいろ突っ込みどころはあるわけです。

しかしながら、「マリモ、ありがとう」という自然への感謝というのはアイヌの自然崇拝にも通じそうな感じがしたり、観光というのも地域にとって大切なものだったり、そもそも儀式というのは観光客が見るようなものではないけど誰も知らないと廃れてしまう危険があったりつまり難しい。難しい。難しい問題であります。

 これは「マリモの恋伝説」にも通ずるとこがありそう。観光にはこういう「演出」っていうフィルターが常にかかっている。

 

 

さてマリモ最新情報です。2018年(予定)から「阿寒湖のマリモ」の生育地で有料のガイドツアーを開始するそうです。

保護のため1961年から生育地への立ち入りが禁止されていたので、半世紀ぶりに見学可能となります。全国のマリモファンはお見逃しなく!