どさんこカメラ

北海道各地で撮った写真を掲載します。

実は北海道にゆかりのある伊福部昭の魅力はゴジラ音楽だけじゃない。

こちらの音楽をお聴き下さい。


伊福部昭 - ゴジラ (1954)

言わずと知れた「ゴジラ」のテーマです。

 

今回はゴジラ音楽の生みの親、伊福部 昭さんについて紹介してみたいと思います。

 

伊福部 昭(いふくべ あきら)1914年〈大正3年〉~ 2006年〈平成18年〉

3SCD-0037 伊福部昭百年紀Vol.5

 

「ゴジラ」の第一作は1954年、まだモノクロ映画だった時代です。

その音楽を担当したのが、伊福部昭。

彼がこの時「ゴジラ」のために作曲した数々の音楽は、その後の平成ゴジラシリーズまで引き継がれています。

 

冒頭の有名な作品の他、「ゴジラ上陸」


ゴジラ上陸

初代ゴジラは「水爆実験の影響で目覚めた太古の生物」という設定でした。

正体不明の怪物が、ひとあしひとあし近づいてくる不気味な雰囲気が表現されています。

 

 


怪獣戦争マーチ

アレンジされて他の特撮映画でも使われたマーチ。

初代ゴジラの音楽は、庵野秀明監督「シン・ゴジラ」で大変効果的に使われているので、耳にした事があるかもしれません。

 

 

また、ゴジラ音楽のみならず、ゴジラの声の考案者でもあります。

爬虫類(ゴジラは一応爬虫類)は滅多に鳴かない。という事で音源探しに苦労した伊福部は、動物園などをまわりますが、最終的には「コントラバス」という楽器の音にたどり着きます。

コントラバスの弦を1本はずし、皮手袋にヤニをつけてひっぱる(そして逆再生している?)という試行錯誤の結果生み出されたそうです。

 

 

今でこそ「カイジュウ」という単語が海外映画でも登場し、海外にも日本の怪獣映画ファンがたくさんいます。

しかしゴジラが初めて作られた1950年代当時の日本では「ゲテモノ映画」「子供だましの映画」と揶揄されていました。

伊福部昭はゴジラに携わる以前から著名な作曲家でしたから、そんな「ゲテモノ映画」に作品提供するのはやめたほうがいい、という友人もいたそうです。

頭のカタイ作曲家ならそんな依頼を断ったでしょうが、伊福部はこの「怪獣映画」が気に入ったらしく、素晴らしい音楽が映画につけられることになりました。

 

伊福部は、モノクロ映画の「キングコング」(1933年アメリカ)について、「我々の持っている無意識な不満のようなものをぶち壊してくれるようで快かった」と語っています。

これは「ゴジラ」が単に娯楽映画としてつくられたわけでは無く、「敗戦と国民の鬱屈」という裏テーマを含んだ作品である事をいち早く見抜いたようにも思えます。

 

僕の推測ですがトーキー映画の「ロスト・ワールド」(1925年アメリカ。ドイルの「失われた世界」が原作)も気に入っていたようです。彼は「元祖怪獣映画好き」だったのかもしれません。

 

 

 

北海道との深い縁

伊福部昭は1914年、北海道釧路町に生まれました。実は北海道出身です。

少年時代は父と共にアイヌと良く交流し、アイヌ音楽や舞踊から大きな影響をうけます。アイヌはのちの作品にも度々モチーフとして登場します

 

アイヌの生活と「歌と踊り」は切り離せません。

文字をもたない彼らは、生まれてから死ぬまで音楽と共にあります。祭事の時だけ歌うのではありません。

「ウポポ」、「リムセ」、「ホリッパ」、「ヘチレ」、「タプカラ」、これらは全て「踊り」という意味です。しかしこれだけ多様な言い方があることからも、決して僕らの使う「踊り」という単語だけでは包括できない雰囲気があるのを感じ取れるのではないでしょうか。

ちなみに伊福部の代表作である、交響曲「シンフォニア・タプカーラ」

なにやら外国語の様な響きですが、「”タプカラ(前述した『踊り』の意)”の交響曲」という意味です。アイヌへの共感とノスタルジーを込めたと本人は語っています。

 

 

 

そんな少年時代を過ごした伊福部は、北海道帝国大学に入学。

卒業後、厚岸の森林管理事務所に勤務します。その後31歳まで北海道で過ごしました。

(林務官として働く傍ら創作にも励み、この時パリの音楽コンクールへ応募した「日本狂詩曲」が1位に)

 

 

 

 

「ゴジラ」だけではない数多くの作品

 というわけで、伊福部昭といえば「ゴジラ」が有名ですが、

前述したとおりゴジラ作品に携わる以前から海外にも名が通る実力派の作曲家でした。

彼が作ったのは特撮用の映画音楽だけでなく、交響曲、バレエ音楽、歌曲、吹奏楽曲など多岐にわたります。その作品数を上げれば、膨大でとても書ききれません。

 

なので、僕のおすすめとして3つ。

①『交響譚詩』(1943年)


伊福部昭 交響譚詩 第1譚詩

交響譚詩 第一楽章

交響譚詩 第一楽章

 

 放射線の影響で亡くなった兄のために作曲したもの。もしかしたら、核爆弾や放射線を裏テーマにした『ゴジラ』に関わったのも、何か思い入れがあるのかもしれません。

 

 

 

②『シンフォニア・タプカーラ』(1954年 / 1979年)

シンフォニア・タプカーラ 第3楽章 Vivace

シンフォニア・タプカーラ 第3楽章 Vivace

  • アーティスト: アンドレア・バッティストーニ指揮/ 東京フィルハーモニー交響楽団
  • 出版社/メーカー: COLUMBIA
  • 発売日: 2018/04/18
  • メディア: MP3 ダウンロード
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 

 

 ③『ピアノとオーケストラのためのリトミカ・オスティナータ』 (1961年)

ピアノとオーケストラのための「リトミカ・オスティナータ」(1961)

ピアノとオーケストラのための「リトミカ・オスティナータ」(1961)

 

 

 

 

あまり大きな声では言えませんが、僕は平成ゴジラやミレニアムゴジラがあまり得意ではありません。初代ゴジラや、昭和のほんわかしたゴジラが好きです。あまり期待しないで見たのですが「シン・ゴジラ」も面白かった。

ということはもしかして、僕のゴジラ好きは、ゴジラというか伊福部音楽の影響なんじゃないか。と最近思います(^^;