札幌芸術の森美術館で開催中の『木彫家・藤戸竹喜の世界~現れよ。森羅の生命~』を見てきました。
藤戸さんの、木彫活動70年の軌跡を辿る展示です。
見た後は、生意気ながら「良いもの見たなあ」という満足感で帰路につきました。
木彫や工芸、アイヌ文化に少しでも興味のある方はぜひぜひ見に行ってほしいです。
さて、木彫家・藤戸竹喜さんとはどんな人かというと・・
あ、展示パネルの略歴がアイヌ発音で書かれてます。
全然わからない・・横に日本語。
藤戸竹喜さんは、1934年美幌町生まれ。
旭川市で、同じく木彫をしていたお父さんと共に「木彫りの熊」を作って生活していました。
(昔は木彫り熊はとても人気があって、木彫り熊で生計を立てる人も少なくなかった)
この方が藤戸さん。
30歳の時、阿寒湖畔にアトリエを構えて独立。
その後は文化庁より表彰、スミソニアン博物館への出展、レーニン博物館へレーニン像を収めるなど、北海道を代表する木彫家になられました。
実際にアイヌとしての生活をした経験から、熊などの動物のみならず、アイヌをモチーフとした作品が多いのも特徴です。
藤戸さんの作品、見たことある人も多いと思います。
JR札幌駅西口の改札にある、弓矢を持ったエカシ(翁)像。
これを彫ったのも藤戸さんです。(写真は無いのかよ)
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1964年。藤戸さんの、はじめてのオリジナル木彫熊。
木彫熊は商品として大量に彫らないといけないので、だいたいポーズが決まっているのですが、こちらの猛々しい熊は前足を振り上げる珍しいポーズ。
商品というより作品を意識して作られたんでしょうね。
ここから70年に渡る木彫り活動が始まります。記念すべき一点。
鹿を襲う熊。
熊の躍動感、浮いてるように見える理由は、土台との接点が熊の足しか無いからです。土台と熊は1本の木から切り離さず彫られています。さらにすごいことに、作品はデッサンなしで彫っていくそうです。
1本の木を切り離さずをそのまま使うとは?
わかりやすいのがこちらの巨大な作品。
1本の木からそのまま彫り出されています。
後ろから見ても、横から見ても構図がキマっているのが不思議。
木で表現する雪の深さ、海底の砂。
構図も面白いです。こちらは川に泳ぐ鮭に跳びかかる熊。
親子熊
どことなく泣いているような・・。
熊やオオカミ、魚類、海洋生物まで作品は多岐にわたります。
甲殻類はまるで本物。
ご自身の祖母や親類をテーマに彫った人物木彫。
ほぼ人の大きさほどある大きな木彫りです。
スーツにアイヌ刺繍の脚絆をつけたエカシ(翁)。
実在のモデルがいるそうで、彼は「ハイカラエカシ」と呼ばれていたそうです。シブくてかっこいいです。
装飾も凝っています。
さわれる作品もありました。
シーソーのようにゆらゆら揺らして遊べるように彫られています。
熊を彫っている様子も映像で紹介されています。
しばらく見ていくと…藤戸さんの意外な趣味もわかります。
展示は12月17日(日)まで。
11月14日(火)から一部の作品の入れ替えがあります。チケットの半券を提示すると半額で入場できるので、作品入れ替え後再度見てもいいですね。
芸術の森美術館は坂の上にあります。冬の運転が不慣れな方はお気をつけて。