前回紹介した「むかわ竜」に会いに穂別博物館へ向かった。
むかわ竜について知り、ザ・パーフェクトを読み、発掘指揮者であるダイナソー小林こと小林准教授の講演会まで行った僕はもはや恐竜熱に浮かされていた。一刻も早く本物をこの目で見たかったのである。
博物館へは、札幌から車で2時間くらい。
ひたすら車を走らせども走らせども同じような風景が延々と続く。
山、畑、畑・・・・
実は僕は運転していなくて、「恐竜はティラノサウルスやトリケラトプスしか知らない。」という友人を巻き込んでいたのだった。
片道2時間というのは往復4時間というわけで、結構長い。
道中のこじゃれたカフェや、おいしいソフトクリームなんかをゲットしながら進むのも旅の醍醐味であるんだけど、そういったものは何一つ見当たらない。
いつまでも山と畑しかなかった。
おいしいものにありつけず、ただただ運転をする友人は不憫であった。
発掘現場である稲里地区を通過し、いよいよ町に近づいてきた。
もしかしたらあの山、この崖からむかわ竜が出てきたのではないか知らん。と妄想をふくらませ、眠そうな友人をしり目に僕は興奮していた。
ちなみに貴重な研究材料となる現場が荒らされるのを防ぐため、発掘場所はむかわ町穂別のどこかは秘密になっている。
遠方から来るには休憩場所が少ない&恐竜感が無い問題
休憩するために、やっと見つけたカフェに立ち寄った。といってもすでに博物館がある町内には到着している。
この辺りには休憩できるスポットが劇的に少ない。
そして大問題・・
恐竜メニューがひとつもない!!
アンモナイトロールケーキは?
恐竜の足跡ハンバーグとかは??
せめてむかわ竜クッキーを出してくれ!!
悶絶する僕に、友人は煮詰まったコーヒーを飲みながら落ち着きはらって聞いた。
「何がそんなに問題なのだ。こんなものでは?」
ノン。こんなものであってはいけないのである。
なぜならこの町は、日本で類を見ないほど完璧な恐竜化石を産出した町だ。
日本で一番の「恐竜の町」になってもらわないと困るのだ。
今、日本で恐竜といえば福井県だ。福井県立恐竜博物館をご覧よ。あそこはカナダ、中国と並んで世界三大恐竜博物館なんて言われているよ。でも出てきた化石を比較してご覧、この町で発掘されたむかわ竜の方がよっぽど立派じゃないか!!
福井産恐竜の関係者には怒られそうだが、そういって僕は頬を膨らませた
友人は「でもこういうイベントもやってるみたいだよ」といってお茶を濁した。
あまり興味がないようだ。
いよいよ博物館へ
ついた。
中に入ると、ホッピー様が出迎えてくださる。
ホッピー様は、正式名を「ホベツアラキリュウ」という。ホッピーというのは愛称。
1975年に発見され、この博物館が建てられるきっかけを作った偉大な方だ。
町のカントリーサインにも描かれている。
※ホッピーの横の魚は名物である「ししゃも」
「これが「むかわ竜」?」
「ちがうよ。これはホベツアラキリュウだよ」
「ふうん。この町では昔も恐竜が見つかってたんだね」
「ちがうよ。ホッピー様は・・恐竜じゃないんだ・・・」
実はホッピー、恐竜ではない。クビナガリュウ類という、恐竜とは全然別の海に生息していた生き物だ。恐竜たちと生きていた時代が同じなので間違えられやすいが、クビナガリュウは恐竜じゃない。
ホッピーはこの町に博物館を建てるきっかけを作り、日本で初めて本格的な論文が書かれたクビナガリュウ類だ。だから町の誇りだ。でも恐竜じゃない。
町としては、ぜひ、今度こそ、恐竜の化石が欲しかったのである。
そういう観点からも今回発掘された「むかわ竜」という恐竜の存在は大変意義が大きいのである。
※ちなみにドラえもんの映画に出てくる「ピー助」は、クビナガリュウ類をモデルにしてる。 だからピー助は恐竜類ではなくクビナガリュウ類なのである。
ちなみに、次にあげるものは「恐竜では無い」生き物。
これから北海道は恐竜ワールドになる予定だから、北海道の人はよく覚えてほしい。
▼クビナガリュウ(海にいる。首が長くてヒレ付き)
▼翼竜(飛ぶ。プテラノドンなど)
▼怪獣
以上のものは恐竜ではない。
恐竜が進化してワニやトカゲになったと思っている人も多いけど、恐竜は進化して鳥になった。
そういう意味では今も恐竜時代なのだ。
*
博物館の中はこういう感じだった。
結構年季が入っている。
▼さわってもOKというアンモナイトが多い
▼ホッピーの足
▼館長が描いた味のある解説イラスト
※友人はだいぶ飽きはじめてきた
▼いのせらたん
「いのせらたん」はここの学芸員さんがつくったキャラクター。
「イノセラムス」という古代の二枚貝がモデル。
イノセラムスは様々な種類があるので、もし恐竜などの化石と一緒に特定のイノセラムスが出てくれば、その恐竜の化石がどの時代のものかだいたいわかる(示準化石という)
「いのせらたん」は適当に造られているのではなく、実在するイノセラムスがモデルになっている。お気に入りのいのせらたんを探そう。
▼「スフェノセラムス・シュミッティ」をモチーフにした「しゅみっとたん」
おみやげがない問題
博物館に来たらミュージアムショップを巡るのも楽しみのひとつ。
さすがにコンパクトな博物館だからミュージアムショップは無い。
でもおみやげくらいは・・・と探したけど全然なかった。
日本では発掘例のないティラノサウルスやトリケラトプスの人形が売っていただけだった。
むかわ竜のグッズも、もちろんない。せめていのせらたんのぬいぐるみがあったら買ったのだけど。いのせらたん抱き枕とかあっても買うのだけど。
むかわ竜まんじゅう、むかわ竜キーホルダー、むかわ竜バッジ・・みたいなあか抜けないのじゃない素敵なやつを作ってほしい。本当に。
むかわ竜の全身骨格が見たい!!問題
そして僕はついに念願の「むかわ竜」の化石を見た。
それはガラスケースに入った頸椎の一部と、立派な大腿骨の一部だ。
大きくて美しい骨だった。
まだ研究中とのこともあり撮影禁止だったので写真は無い。
でもできることなら全身が見たい。
ホッピーの様な骨格標本を作ってほしい。見に来る人もそれを望んでいるはずだ。
博物館のロビーにはむかわ竜のレリーフが飾ってあるだけだ。
この平面的なむかわ竜‥‥ファンはもうこの構図見飽きたぞ。
むかわ町は、むかわ竜の発見を機に、町全域をステージとする「恐竜ワールド」を目指すと発表している。
たぶん「これから」恐竜の町になってくれるのだと思う。
ライバル(勝手に)の福井県から見たらまだまだ改善点は山積だ。
ふるさと納税の返礼ひとつとっても、恐竜を推している他の地域と差がある。
もし返礼品に恐竜応援募金とか、質の高いフィギュアがあれば、僕らは喜んで金を貢ぐのになあ。でもそういうのが無い。
この博物館は、新種のアンモナイトやイルカの仲間の化石採集、研究報告などもきちんと行っている。博物館のレベルは高い。だから時間とお金さえあれば、化石マニア以外でも楽しめる展示になるに違いない。
博物館増設の話もあるとかないとかいう噂だから、今後が楽しみだ。
ししゃもを食べて帰ります
近くの温泉施設でししゃもを焼いて食べた。
メスの方が高級だけど、オスより断然おいしいからおすすめ。
「むかわ竜」のキャラクターもいた。
むかわ竜はまだトサカがあるかどうか判明していないから、バンダナの使い方が上手い。
ああ楽しかった。
しかし、一緒にきた友人は楽しかったのだろうか。
何も知らない人がこの町に来ても楽しめるだろうか。
博物館だけが頑張ってもしかたない。
「恐竜ワールド」への道はまだまだ遠い。