ここ数年でガーデニングや家庭菜園を始めた方も多いのではないでしょうか。
庭にいると、大きくて毛がモフモフした蜂を見かけると思います。
それはきっと「マルハナバチ」です。
見かけると血の気が引くスズメバチと違い、放っておけば攻撃はしてこないので、大きな体で一生懸命密を集める姿がなんだかかわいらしいと感じる方もいると思います。
北海道にいるマルハナバチはおよそ12種類と言われています。
その中でもよく見かけるのは2種類、エゾオオマルハナバチと、外来種のセイヨウオオマルハナバチです
エゾオオマルハナバチ(蝦夷大丸花蜂)
北海道にのみ生息しているマルハナバチ
セイヨウオオマルハナバチ(西洋大丸花蜂)
授粉用に海外から輸入された外来種。
北海道で繁殖してしまい、いまでは道内のほとんどの市町村で見られる。
おしりを見ればわかる!
皆さんが見かけたのはエゾオオマルハナバチでしょうか、はたまた外来種のセイヨウオオマルハナバチでしょうか。
実はおしりで見分け方られます。
おしりがオレンジ色→エゾオオマルハナバチ
おしりが白色→セイヨウオオマルハナバチ(外来種)
おしりが白は「セイヨウオオマルハナバチ」(外来種)
おしりが白っぽい在来種のマルハナバチもいますが、街中ではまず見られない種類なので、おしりが白であれば外来種と考えていいと思います。
先ほどの写真を見てみましょう。
おしりが白いですね。
なのでこれは外来種の「セイヨウオオマルハナバチ」です。
哀しきセイヨウオオマルハナバチ
外来種のセイヨウマルハナバチは、全道各地で繁殖し、在来のマルハナバチとの交雑や駆逐が懸念されています。
ではそもそも、なぜ外来種が北海道に来てしまったのでしょう。
セイヨウオオマルハナバチは「野菜の花の受粉」という仕事のために日本に来ました。
トマトやナスができるためには、その花を授粉させる必要があります。これは人間の手でやるよりも、蜂にやってもらう方が効率が良いのです。
野菜の受粉作業を蜂に手伝ってもらうことは、今では多くの農家さんがやっていることです。
その際、ミツバチなどを使うこともあるのですが、1980年代にヨーロッパでマルハナバチの授粉作業の導入に成功してからマルハナバチも使用されるようになりました。
日本でも1991年に初めてマルハナバチが導入されます。
さてここで心配なのは、外来種を持ち込んで日本の在来種に影響はないのか?というところ。
しかしながら、当時北海道の多くの関係者は「北海道の冬の寒さで生き残れないだろう」という極めて楽観的なものでした。
ところが導入から間もない1996年、北海道門別町でセイヨウオオマルハナバチの女王蜂の越冬、そして巣が確認されます。日本各地でも繁殖が確認され、特に北海道で急速に繁殖を広げていったのでした。
これを受けて、2006年9月1日、セイヨウオオマルハナバチを「特定外来種」に指定。
飼育や運搬を行うためには許可が必要になり、野外に放つことも禁止されました。
在来種への影響は心配ですが、人間の都合で輸入された上に駆除までされてしまうという哀しいセイヨウマルハナバチなのでした。
戦前に食用ガエルのエサとして持ち込まれたアメリカザリガニ、1960年代に飼育用として持ち込まれたものが野生化したアライグマなどなど、まだ環境意識の低かった昭和時代の話ならまだしも、平成になってもこの程度の認識だったことに驚かされます。
北海道のマルハナバチ
とはいいつつも、在来種エゾオオマルハナバチの生息エリアが脅かされるのはいうまでもありません。
ここで北海道のマルハナバチをざっくりご紹介しましょう。
北海道にいるのは、エゾオオマルハナバチ、エゾナガマルハナバチ、エゾトラマルハナバチ、ハイイロマルハナバチ、シュレンクマルハナバチ、エゾコマルハナバチ、アカマルハナバチ、エゾヒメマルハナバチ、ミヤママルハナバチ、ノサップマルハナバチ・・・など12種類も生息しているそうです。
例えばこんな色なら、超レア
「ノサップマルハナバチ」。根室のごく一部でしか見られない珍しいマルハナ。
セイヨウオオマルハナバチと似ているので間違えないようにしましょう。
例えばこんな色なら「アカマルマルハナバチ」
北海道各地に生息しますが、山で多く見られます。
例えばこんな色なら「エゾヒメマルハナバチ」
こちらも北海道各地に生息しますが、高山を好むため見かけることは少ないでしょう。
その名の通り小さなマルハナバチです。
ここに載せたものはざっくりしたイラストですし、働きバチや女王蜂かによって色も違います。もっと詳しく知りたい!という方は、ぜひ図鑑で色合いをご確認ください。
北海道大学出版でだしている「日本産マルハナバチ図鑑」がおすすめです。
さて、マルハナバチの魅力が少しでも伝わったでしょうか・・
マルハナバチは温厚で可愛いいので僕もつい見てしまうのですが、蜂なので刺します。
外来種のマルハナバチについては駆除活動も行われていますが、前述したとおり刺しますので、皆さんは気安く捕獲しないようにしてくだされ。
刺激しないように遠くから見守るか、図鑑で愛でてあげてください。
北海道のマルハナバチに幸あれ。