エスタが2023年8月31日で閉店する。
札幌駅まで新幹線が延長されることに伴い、駅周辺では再開発が進んでいる。
その一環として、エスタと1階にあるバスターミナルは取り壊しが決定した。
エスタは、45年という歴史に幕をおろす。
元々このビルは1978年に「札幌そごう」としてスタートした。
僕が生まれる前のことである。
今とは違う姿の札幌駅が建っていた時代だ。
2000年に、エスタの中核であった札幌そごうが閉店。翌年には北海道初の「ビックカメラ」がエスタにオープンした。
さらに2004年には10階に「ら〜めん共和国」が登場。
ユニクロ、LOFT、ナムコ、ABCマートといったテナントが参入し、札幌駅前のビルの中でもとても庶民的なビルだった。
札幌中心部で買い物といえば、4プラ(ひと足先に再開発のため解体)、JRタワー(パセオは同じ理由で営業終了)、パルコ、ピヴォ(同じ理由で解体)などがあったが、その中でもエスタは、こうなんていうか、あまりイケイケな客がいないので入りやすい店だったのである。
決して若者向けのビルではなく、高級路線でもなく、シニア向けでもない。絶妙な立ち位置であった。
そごう閉店後も頑張っていた地下食品街も使いやすかった。
可もなく不可もないラインナップだったが、衰退しているわけでもなく、時々人気のお菓子屋さんなんかがぽつりと参入した。「はーいいらっしゃーい」と毎回同じおばあちゃんの呼び込む声が響く魚屋、精肉店などもあり、周囲のビルよりは敷居が低い感じだった。
東急側から
かつてビアガーデンが開催されていたテラスに続く階段。冬は怖かった。
テラスの下はバスターミナル
70年代のデザインがシブい2階のエレベーター。右はトイレ。
ビックカメラの店内。
最後の大きな買い物は2017年の『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』だった。
発売日当日に並んで買った。列に並ぶ人はみんなわくわくしていた。
今はネットでゲームをするので、並んで何か買うという事も本当になくなってしまった。
階段
中国からのインバウンドがすごかったときはエレベーターが全然来なくてこの階段をよく使った。最近は大きな買い物袋を抱えた観光客も少なくなった。
大食品街の前には、エスタへのさよならメッセージカードがあった。
エスタ2階入り口。JRタワーとの連絡通路前。
バスの団体客の集合場所によく使われている。
このレトロな雪の結晶のデザインが結構好きだった。
カフェの間の通路(バスターミナルへ続く道)
ここのカフェも何回か利用した。
発車時間ぎりぎりにこの階段を駆け上ってくる人の、なんと多いことよ。
高速バスを待つ間ここに並ぶのだが、ほぼ外と変わらないので冬はめちゃめちゃ寒かった。
エスタに続き、バスターミナルは9月30日で閉鎖される。
その後5年間は仮設バスターミナルで運用とのことで、なかなか長い。
降車場には屋根すらないらしいが、今後どうなるのだろう。
バスターミナルの向かいでも工事が進んでいる。
道路の向こう側は、現在は駐車場。ここも壊されて新ビルが建つ予定。
その横に新幹線の駅ができるらしい。
20代前半、なにもうまく行かず、普通に生活するのが難しかった。
休日に家にいるのが嫌で、用もないのにエスタに出かけては時間を潰した。
歩き疲れてベンチに座り、虚空を見つめる。
そのころの僕といったらいつもこんな調子だった。
心のベストテン第一位はこんな曲だった。
♪ コモエスタ~エブリワン~お元気でっす~か~(アミーゴ!)
エスタ~コモエスタ~みんなのエスッタ!(WO!) ♪
地下のバスターミナルからはJRより運賃が安い高速バスが何本も走っていて、どれかに飛び乗れば、北海道のどこかに連れて行ってくれるのだった。
現実逃避の旅行から、高速バスで札幌に帰ってくるのは夜だった。バスターミナルのいつもの灯りが見えた。明日からまた仕事なんだという憂鬱な気持ちと、バスターミナルの灯りをセットで思い出す。
エスタはほかのビルと違って、一人でいることを許容してくれる場所が多かった。
エスタに来るたびにみじめな生活を思い出してしまうけど、この場所があってよかったと思う。
悲しくなるからお別れには行かない。次に来るとき、もうエスタはないだろう。
ありがとうエスタ、さようならエスタ