さて、前回北海道博物館の特別展示「北海道の恐竜」に行ってまいりました。
北海道で発見された7つの恐竜化石が一挙に公開された展示です。
その様子を交えながら、北海道の恐竜の魅力をお伝えしようと思います。
北海道から恐竜化石はでない?
最初の展示
・アンモナイト
・イノセラムス
・ホベツアラキリュウ
最近恐竜に興味を持った方からすれば信じられない話かもしれませんが、
少し前までは北海道から恐竜化石が出るイメージはまったくありませんでした。
日本の恐竜産地といえば?という質問に福井県や群馬県などがあがっても、北海道と答える人はまずいなかったでしょう。
2000年代にカムイサウルスが見つかる以前は、確かにそうだったのです。
そのかわり、北海道は「アンモナイト王国」として世界的に名を馳せていました。
外国人でさえ、アンモナイトの研究をしている人なら北海道という地名を知っているはずです。
北海道の三笠市にはアンモナイト博物館という異名?をもつ博物館まであります。
▼アンモナイト博物館こと「三笠市立博物館」。ひたすら巨大アンモナイト
北海道は、それだけアンモナイトがよくでる土地なのです。
特別展にもアンモナイトが展示されていましたが、
ほかに「イノセラムス」という絶滅した巨大2枚貝の化石も展示されていました。
▼大きいものだと1mにもなる2枚貝イノセラムス。
イノセラムスも北海道で多く発見される化石です。
アンモナイトやイノセラムスがどうして北海道でたくさんとれるのか?
それは、今の北海道がアンモナイトが生きていた時代の海でできた地層が広がっているからです。
アンモナイトはイカの近縁、イノセラムスは貝なので、海で生きていました。
海で生きていた生き物の化石は当然、北海道で良くとれるというわけです。
逆にいうと、海で出来た地層が多いので、恐竜などの陸上に住む脊椎動物の化石は珍しいのです。
恐竜じゃない・・・・けどすごいよホッピー
▼特別展でのホベツアラキリュウ(ホッピー)
こちらは穂別で1975年に発見された「ホベツアラキリュウ」です。
何だ恐竜出てるじゃん、と思われるかもしれませんが、残念ながら分類上は恐竜ではありません。海に住んでいたクビナガリュウと呼ばれる爬虫類です。
クビナガリュウは海の中でアンモナイトを食べたりしてました。
前述したとおり北海道は海の地層が多いので、海に住んでいたクビナガリュウは他にも小平町などで発見されています。
このホベツアラキリュウは発見以来「ホッピー」という愛称で地元穂別町(合併前)で親しまれ、ホッピーを展示するために町に博物館が設立されることになりました。
まさかその20年後に、カムイサウルスが同じ町で発見されるとは夢にも思わなかったでしょう。
ホッピーが化石を地域で盛り上げてくれたおかげで、カムイサウルスを迎え入れる準備が整っていたように感じます。
ホッピーは恐竜化石ではないので、「北海道の7つの恐竜化石」には数えられていませんが、北海道で初めて全身復元骨格が作られたのはこの化石が初めてです(国内では2番目)
そう考えると色々功績の多いリュウであります。
こちらが今回展示された「7つの恐竜化石」たちの産地です。
黄色で表示された場所から見つかっています。
黄色のところは「蝦夷層群」と呼ばれる地層で、さきほど書いた通り、海で堆積した地層があるところです。
もう少し詳しく書くと、北海道には蝦夷層群のほか、「函淵(はこぶち)層群」という地層もあります。蝦夷層群は深い海底の層、函淵層群はそれより浅い海のものです。
この2つの地層はアンモナイトがよく出る層として世界的にも有名です。
ここで余談ですが、下の図は北海道の石炭産地を表したものです。
「蝦夷層群」とそっくりなのがわかります。
昭和の経済を支えたほど石炭がよくとれた北海道ですが、石炭は実は化石からできています。約5000万年前の植物の化石が石炭です。
こういった地層の近くには白亜紀(恐竜がたくさんいた時代)の層があることが多いので、北海道の恐竜産地はかつての炭鉱街に近いのです。
7つの恐竜化石
1.ニッポノサウルス・サハリネンシス
当時日本領だったカラフトで1934年に発見された恐竜化石
日本で初めて研究された全身骨格恐竜。
全身が復元できるほど骨がみつかるという事は日本ではあまりないのですが、ニッポノサウルスは約60%も発見されています。
▼過去にも一度取り上げていますが、現物をまたお目にかかれるとは思いませんでした
2.ハドロサウルスの仲間
属種不明のハドロサウルスの仲間?の大腿骨と骨盤
1972年ごろ小平町で発見された北海道で最初に見つかった恐竜化石なんですが、発見当初は植物化石だと思われていました‥。
3.ノドサウルスの仲間
夕張市で見つかったノドサウルスの仲間の頭骨です
ノドサウルスの化石としては日本で初めて見つかりました。
▼ノドサウルスはこういうトゲトゲノやつです
4.テリジノサウルスの仲間
テリジノサウルスの爪の一部です
爪の化石としては北海道初なんですが、そこまで細かくなんとか初になるとありがたみがうすれますね・・・
5.ティラノサウルスの仲間
ついに北海道でティラノが出た!と一部で話題になった化石。しっぽの一部です。
芦別市で2016年に発見されました。
映画などでよく見るティラノサウルスは全長12mの巨大な恐竜ですが、そのティラノサウルスよりも小さい、ティラノサウルスの祖先の化石だと思われます。
全長は3メートルくらいのご先祖の化石です。
ティラノサウルスが巨大化していった謎をとく可能性を秘めています。
6.カムイサウルス・ジャポニクス(むかわ竜)
そして我らがカムイサウルスです。
日本では恐竜化石の全体がそろうという事は少ないのですが、カムイサウルスは体全体の約80%が発見されるという驚異的な保存状態でした。
北海道のみならず日本でも初めてのことです。
カムイサウルスは死んだあと、何かの理由で海に流され、海底に沈んで化石になったといわれています。
北海道の化石は、海だけでなく陸の世界も知ることができるんだよ、という証明でもありますね。
7.謎の化石
2021年に発見されたばかりの「謎の化石」です。
現在研究中のため写真撮影はNGでした。
これを見つけた堀田さんはお散歩中にカムイサウルスを見つけた方でもあります。
堀田さんを含めカムイサウルス発見までの経緯はドキュメントとしてかなり面白いんで、もう少し知りたい方はこちらの本がおススメです。
そんなわけで、アンモナイト王国から恐竜王国になる日も近いなあと思っています。
謎の化石の研究発表も楽しみです。